

―――建築家として、船橋市にはどのような印象をお持ちですか? また、この地域ならではの住宅の傾向はあるのでしょうか?
船橋市は、基本的に都心通勤圏のベッドタウンという要素が大きいエリアですが、東部や北部などの内陸側は戸建て住宅を中心とした郊外らしい風景が広がり、総武線や京成本線が走る南部にはマンションが多い印象です。しかし、南部であっても一極集中的な高効率な建物というのは、船橋駅周辺など、意外と限られています。そうした場所の開発は終わりつつあり、行政は近年新しい地区計画を次々と策定しています。その点で船橋市は今、過渡期にあるといえるのではないでしょうか。
―――行政としても次のステップを考えているわけですね。これからの船橋市にはどのような住宅がふさわしいとお考えですか?
このタイミングで次世代を担う住まいの在り方を考えることは大切だと思います。新船橋駅周辺を見ても分かる通り、開発の舞台は船橋駅周辺のような中心市街地から、その近郊へと移っています。しかし、どこにでもある大規模・高効率な開発で街づくりを考えることがどの場所にもふさわしいとは限りません。これからは、それぞれの街の個性に合った新しい居住の在り方を考える必要があると思います。船橋市は、市街地から離れた地域でも高いポテンシャルと様々な可能性を持っています。そこにしかない個性を持った、開発を目指すことで、普遍的な価値を生み出せるエリアだと考えています。
―――今後、船橋市で住まいづくりに携わっていく場合、どのような提案をしていきたいとお考えになりますか?
船橋市には、子育て環境や豊かな緑といった要素は揃っています。ですから、その土地の住環境に不足しているものを提案していきたいと考えています。例えば、帰宅した時に非日常的な雰囲気や安らぎを感じられるエントランス空間があったり、休日には街に出かけるだけではなく、建物や敷地の中に家族で寛げる場所があるのもいいと考えています。今までそこになかった「質の高い居住環境」をご提案し、地域の魅力を生かしながら、新らたな住まいの選択となる「邸宅」づくりを追求していきたいと考えています。